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基本給は会社の判断で下げられる?減額を検討するときに押さえておきたいポイント

8月31日
読了時間: 5分

更新日:9月3日

今回は、基本給の減額を検討するときに押さえておきたいポイントについて見ていきます。

「業績が厳しいので人件費を見直したい」「管理職から外れる社員の給与を下げたい」「期待する成果が出ていない社員の基本給を見直したい」――こうしたご相談は、実務上決して珍しくありません。


ただし、基本給は会社が自由に変更できるものではありません。 経営上の必要性や人事上の理由があったとしても、それだけで一方的な減額が認められるわけではない点には注意が必要です。


一方で、「基本給は一度決めたら絶対に下げられない」ということでもありません。大切なのは、減額の理由と会社の賃金制度を整理したうえで、適切な手順を踏むことです。


基本給の減額は「労働条件の変更」


基本給は、労働契約の重要な労働条件の一つです。

労働契約法第8条では、労働者と会社は合意によって労働条件を変更できるとされています。したがって、基本給を変更する場合も、まず基本となるのは本人との合意です。

たとえば、職務内容や責任の範囲を変更し、それに伴って給与額を見直す場合があります。このとき、変更後の仕事内容、給与額、変更時期などを本人に説明し、納得を得たうえで労働条件を変更するのであれば、比較的進めやすいでしょう。


反対に、「会社の業績が悪いから来月から基本給を10%下げます」と会社側だけで決めてしまうと、労働条件の不利益変更として問題になる可能性があります。厚生労働省も、従来支払われていた賃金の引下げについて、労働契約や就業規則などに応じた適法な変更手続が必要であると説明しています。


「就業規則を変えればよい」とも限らない


では、本人が同意しなければ基本給は一切変更できないのでしょうか。

一定の場合には、就業規則の変更によって労働条件を変更できる余地もあります。ただし、就業規則を書き換えるだけで足りるわけではありません。


労働契約法第9条・第10条では、労働者に不利益となる就業規則の変更は原則として一方的にはできず、例外的に、変更後の就業規則を周知したうえで、その変更に合理性が認められる場合に労働条件を変更できるとされています。合理性の判断では、社員が受ける不利益の程度、変更の必要性、変更内容の相当性、労使交渉の状況などが考慮されます。

そのため、全社員の基本給を一律に大幅減額するといった対応は、相応に慎重な検討が必要です。


会社の経営状況だけでなく、「なぜこの減額幅なのか」「役員報酬やその他の経費削減は検討したのか」「一定期間の措置なのか」「不利益を緩和する方法はないか」といった事情も整理しておくことが重要になります。


降格や評価低下に伴う減額では、賃金制度を確認する


実務で特に多いのが、降格や人事評価に伴って基本給を下げるケースです。

ここではまず、就業規則や賃金規程がどのような仕組みになっているかを確認します。

たとえば、等級ごとに給与レンジが設定され、「等級が下がればそれに応じて基本給も変更される」という制度が明確に定められている会社と、採用時に個別に基本給を決め、その後の減額ルールがほとんど定められていない会社とでは、同じ降格でも検討すべき内容が変わります。

「成果が出ていないから」「管理職として不適格だから」という理由だけで給与を下げるのではなく、どの規程に基づき、どの人事制度を適用して、いくらに変更するのかを説明できる状態にしておくことが重要です。


懲戒処分としての「減給」は別のルール


なお、不祥事などに対する懲戒処分として給与を減額する場合には、通常の給与改定とは別のルールがあります。

労働基準法第91条では、減給の制裁について、1回の額は平均賃金1日分の半額まで、また、一賃金支払期における減給総額はその期間の賃金総額の10分の1までという上限が定められています。さらに、懲戒処分を行うためには、その根拠となる規定が就業規則に整備されていることも重要です。

通常の賃金制度上の給与改定と、懲戒としての減給を混同しないよう注意しましょう。


減額を決める前に「理由・根拠・手続」を整理する


基本給の減額を検討するときは、いきなり本人に減額額を提示するのではなく、まず次の点を整理することをおすすめします。

「なぜ減額するのか」「就業規則・賃金規程上の根拠はあるか」「個別同意が必要なのか」「減額幅は妥当か」「本人にどのように説明するか」。この順番で整理すると、必要な対応がかなり見えやすくなります。


特に、実際の会社では、法律論だけで結論を出せないことも少なくありません。これまでの給与決定の経緯や他の社員とのバランス、本人との関係、今後どのように働いてもらいたいのかまで考えたうえで、着地点を探す必要があります。


基本給を見直す場面では、減額できるかどうかだけでなく、なぜその変更が必要なのか、どのルールに基づくのか、本人にどう説明するのかまで整理しておくことが大切です。減額額を先に決めるのではなく、「理由・根拠・手続」の順に確認することが、トラブルを避ける第一歩になります。




住友社会保険労務士・FP事務所では、高松市を中心に香川県内の企業様の労務管理をサポートしています。日常的な労務相談をはじめ、労働時間や休職・復職、問題社員への対応、メンタルヘルス対応、就業規則の整備など、企業の人事・労務管理に関する幅広いご相談に対応しています。


 
 

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